人気ブログランキング | 話題のタグを見る

徒然日々のこと―新春―


☆新年のまとめ
◆だいたい毎日どっかへ移動して、飲んでいた大晦日、元旦。
楽しいことは大好きで、踊ったり歌ったり喋ったりするのもよいけれども、ひとりで部屋で静かにしたり、仕事が懐かしくなって、ちょぴりだけ、ミニマルな日常生活が恋しくなった。

◆こういってしまうと実も蓋もないような気もするけれど、人間は活字よりもいろいろ相手にするのが大変だ。その人がもっている記憶やイメージ、思いや夢や欲望などがあって、どうしても人を相手にすると、そういった読み物を瞬間のうちに読み取ろうと努力してしまう。小説というのはそういうものだろうとは思うんだけど、同時にいろいろ心の襞をまなざして、読みきれるかというと、勿論わからないところもたくさんある。

◆生き物を相手にして生み出されるのが「活字」。勉強は「死んだ言葉」を相手にしているので、本当は捌きやすいし、順序さえ覚えちゃえばそんなに難しくはない。
でも―「活字」を生み出すのは、エネルギーゲームということでくたびれるよなぁ。ほんとうはぼくにとっては勉強のほうが複雑だけど、ラクちん―でもやっぱり面白みは「活字」のほうがあるよ、ね!?

あ~前置き長いっ!
んで―本題は「おおみそかから新年!」

☆おおみそか
 何年かぶりの部屋でゆっくりな大晦日の夜。これはよかった。なんにもしないのもいいものである―が、見たTVはがちんこ二発。  
 「PRIDE」と「朝生」。「PRIDE」は秋山が超かっこよかった。ものすごい集中力だと思って、ファンになる。鉄壁の攻撃態勢。
 「朝生」は北朝鮮問題でスペシャルだったが、「特番」だけにもう少し、視野の大きな問題をあつかえばいいと思いながら見た。5時間ぐらいやってたけど、ちょっと知的耐久力マラソンといった感じで最後は皆頭がぼやけている風。とくに宮崎 哲弥が番組終了間際にキレていたが、対照的に最後まで怜悧な分析をつづけていた姜 尚中は知といったもののもつ粘り強い力があったような印象。知というのは最後は忍耐力の戦いだろうなぁ、と思う。もう少しやればよかったのに―「24時間密室監禁大討論」とか・・・なんとか☆

☆益子
徒然日々のこと―新春―_a0065481_221648.jpg

 毎年恒例となっている弟のいる益子へと旅行。
 益子は栃木県の山間のお洒落な街。小さい街だが、陶芸の伝統があり、自然から詩情をくみとって、色々な表現にしており、古い世代の人から若い世代の人まで「ものづくり」をしている人が多い。古い家が並んでいて、この地方独特な門、黒い壁や銀色の屋根の建物が並ぶ。それから現代的で、いい感じのする、あたたかでセンスのいいCAFEがあって、ゆるやかな時間に育まれたような人がいる。あまり先鋭ではないけれども、美的に洗練された生活で、生活それ自体が都市とは別のゆとりがあると思った。瀟洒な陶器類や沈澱した時間から選び出された骨董品と四季の織りもののような風景。
 
 もちろん生活者の視点は違うものだろうし、街で暮らす人はどうしても都市に目が向くものだろう。ただ、こういった街が現代都市の感覚を取り入れると、現代都市に対する注釈のようになり、その街のもっている文脈で、感覚が解釈されるので、都市の「ある部分」をもっていってより徹底させたようなモノになる。都市の中にある感覚ではあるけれど、それがこんな風に展開されるというのは多様な面白さ―もっと自信をもっていいと思うのだけれど。

 都市ってあんまり実体がなくって、いろいろやっても結局はポストモダン生活―ほんとうにMTVのような「映像のスライドのREMIX」だと思う。そのかわり都市生活はこういった断片をいろいろ組み合わせて楽しむ自由な生活の楽しみがある。匿名性という自由、自分が自分でなくともいいという自由、ウソとホントの境目の自由(笑)そしてそこから数字を稼ぎ出す文化の面白さ―
徒然日々のこと―新春―_a0065481_203714.jpg

 さて―
 初日は夕方着で、着くと4時ぐらいだった。弟の奥さんが風邪でダウンしていたので、弟と二人で弟の友人の若い陶芸家の作品にツマミをのせて、だらだら「餅」や「肉饂飩」を喰べ「麦酒」を呑み、弟の好きなブランド、FINAL HOMEのジャケットのおみやげをわたして、本や家族やこの辺りに暮らしている芸術家の話などをする。二日目の午後から弟の奥さんと女友達と合流。4人で新しくできた陶器の黒塗りギャラリーを見に行き、その足でさびれた山のお寺へ初詣。さびれかたがすごくて、茅葺屋根がドレッドのようになっていた。帰りがけ、弟の友人の雑貨CAFEへ。「ギリシア風サラダ」と「サンドイッチ」に「コーヒー」。オーナーは旅人らしく東京やヨーロッパなどいろいろまわってきた人で、アヴァンギャルドなARTやPOPが好きで、ときどき雑誌の撮影にもその空間を使うらしい。サイケデリックなVJと開いた空間が綺麗でFANTASTIC PLASTIC MACHINEが流れているなか、海外生活のよもやま話に華が咲く。帰宅して、4人で「あんこう鍋」を囲んで、ゴダールの「軽蔑」とナタリーポートマンの「V for vandetta」を見る。どちらもひじょ~に面白かった。三日目は丘陵の高台の温泉で雲から振り落とされる光の斧のような空を眺めながら温泉で「とろとろ」になり、そのあと手打ちソバ屋で「鴨鍋そば」を食べて、笠間という街の有名な神社へ詣で、「甘酒」を呑んで帰る。行きは高速バスを使ったが、帰りは渋滞がひどくて、車酔いするので、電車で帰る。疲れと二日酔いで思わず寝てしまって、気がつくと東京だった。
徒然日々のこと―新春―_a0065481_233178.jpg

☆おかしな新年会
 これも毎年恒例になっている友人TXくん宅での新年会。
 都内某所のギャラリーでBCN(バルセロナ)時代の友人を囲う。TXくんはBCNで修行しているレンガ職人で、螺旋階段を作ったり、壁を積んだりしている。毎年年末になると帰国するので、ギャラリーで、絵を教えるTXくんのおかあさんの描くANGELやラテンの明るい色彩の絵画に囲まれて、ワインを呑んで、アンチョビやオリーブや生ハムをつまむ。おかあさんはいつも明るくオープンで物事にとらわれず人生を楽しんで生きているオーラがあって、ラテンの気質が似合う。黒ずくめの魔導師ルックでいったぼくは、「あなたはなんだかカリスマ性がありそうねぇ~」と笑いながらいわれ、BLACK&WHITEの皮でできた花のブローチをもらう。
 最初はTXくんとおかあさん、ぼくと画家のYちゃんと雑誌のアートプロデューサーのLさんと呑んでいたが、しばらくして人が増え、建築をやっているLIくんら2人組みにフードコーディネーターのMさん、某ナヴィサイト会社で働くCさんと勉強の出来そうなMちゃん、銀座で料理職人をやっているGくん、それにBCNでアート活動をやっていて、いまもつづけているアーチストのKくん、アニメをやっているTくん、彫刻をやっているNくんの3人が来て、総勢13人に。ひさびさに会って最近の活動の話をする。Nくんは「部屋が狭く大きな作品がつくれない」と笑いながらいう。そのあとでT男くんとアニメの話をする。カフカの「変身」のようなものらしい。ぼくはT男くんのことをアンフォルメな存在の不安感のようなものが彼の根底に横たわっているように見ていたので、そういったものを表現するのはいいと思った。TXくんのおとうさんを交え、おとうさんのシャンソンとTXくんのボサノバの弾き語りを聴きながら、ワインがすすみ、かなり酔って饒舌になり、宴もたけなわ。アートプロデューサーのLさんは今度ヨーロッパへ仕事へ行くらしく、BCNの情報をほしがっていたので、ファッションイラストレーターの「JL氏」を紹介する。しばらくして、室内は禁煙なので、外で煙草を吸っていると、彫刻家のNくんが道で酔った勢いで道に倒れ、前の家のチェーンに足を絡ませて、もっていた瓶から酒をこぼしていて、その酒がアスファルトのうえで蛍光灯の白い光に照り返していた。

 終電の時間がきて、ぼくはTXくんの家に泊まっていくことにした。
 見送りということで、帰り支度を整えた友人たちと外へでると、蛍光灯の白いライトに照らされたNくんが道端に立っている非常用の消化栓箱を「がんがん」蹴っている。不思議に乱雑に蹴っているという感じはせず、蛍光灯のなかで、丁寧に仕事をしているような印象だった。そのうち消化栓箱の扉が開いて、金属板のようなものが落ち、警報装置のベルが平和な住宅街に鳴りひびく。あわててTXくんとかけ寄る。ぼくが最初にとめようと試みるがうまくいかず、ダッと身を乗り出したTXくんがすぐにダイヤル式の装置のベルをひねり、ベルをとめる。
 一方で、NくんはすっかりスイッチがONしちゃったようで、しばらく対象をもとめて千鳥足の蛇行をした後で、踏み切りの表示看板に目標を設定。また丁寧かつ一心不乱に蹴りを連打し、看板を蹴り落そうとしている。ぼくは駆け出して、後ろからハガイジメにすると、やがてやってきた友人たちで周囲を囲んで連行し、なんとか駅まで送ってゆくと、自動改札口に彼の体をスライドさせて、みなに別れを告げる。ギャラリーへもどってしばらくすると、TXくんの携帯に帰れなかったことを告げるTELがはいる。TXくんは額に指をあてて、眉間に額の皮を寄せるいつものくせをして、ちょっと困ったような困惑の表情をした。
 もう一度駅まで向かうと、駅では怒号が飛びかっている。Nくんがちょうど暴れながら階段を降りてきていて、周りを友人たちが囲む。また怒声が飛び交う。あんまり意味のないエネルギーの塊のような言葉が炸裂して、光景をフラッシュさせて見える。
 改札からでてきたNくんはどうしたはずみなのか、ぼくの隣にいた建築家のLIくんの胸グラに掴みかかって、
「てめ~!!なんじゃ わりゃぁ なめとんのかぁ こらぁ!!ころすぞ!!」
と、挑発の言葉をわめく。LIくんはなんのことやらわからないといった茫然とした表情をし、マネキンのように視線を虚空に踊らせている。またぼくが後ろから腕をつかんで、ハガイジメにして、なんとか行動をとめると、TXくんが怒鳴って恫喝して彼を突き飛ばし、むこうから駅員のメガネをかけたおじさんがやって来て、「大丈夫ですか?警察呼びますか?」という。アーチスト仲間のKくんが「ぶん殴って気絶させろ!ぶっとばせ!」と叫び、ぼくは駅員のおじさんをなんとか説得しながら、背中を二発ぐらい軽く蹴るが、彼はうずくまって動かない。視線を移すと、改札のむこうに白い自転車に乗った警察官がふたりやってきているが、すでに場は鎮静化していたので、職務質問等は受けずに済んだ。
 どうにか彼をギャラリー連行すると、みんなで笑ったあとで、彼の生活に詳しいT男くんより―
「最近彼女のことや生活のことなどでストレスたまってるみたいだね BCNではこんなことなかったんだけど―」
ということを聴かされる。意味もなく胸ぐらをつかまれたLIくんは「いや マジ ひさびさ切れそうんなったわ おれ~」といって、びみょうにビターな表情をして、首をかしげた―
 なんとなくぼくは彼が彫刻家だけに、部屋が手狭で彫刻作品がつくれないコトがもっとも大きな要因になっているようで、消化栓箱を蹴り、看板を蹴る―あの「連射モード」の姿勢に「ひたむき」な情熱を感じ、あれは少しカタチを変えた創造行為だったのではないかしらん、と思った。対象がしっかり絞り込めないエネルギーの鬱屈がおそらくああいった形で表現されたよう―彼は実直で真摯で不器用な人柄だけにいっそうそう思ってしまう。

 結局KくんとLIくんは帰ることになって、大騒ぎになったNくんとそれに付き添うT男くんとぼくがお泊りコースとなった。
 TXくんのおかあさんとTXくんと家のリビングで呑みなおす。リビングにはすわり心地のよさそうな綺麗な形のイタリアの椅子があって、ミロのお茶目なポスターがかかっていて、貝のようなソファがあり、羊皮の机の上に日本酒をのせて、グラスを傾けて、社会のなんやらかんやらを語りあう。
 しばらくして、Nくんを寝かしつけたT男がくると、T男くんはさかんに謝罪の言葉を口にする。
「ご迷惑をおかけしてしまって―ほんと すみませんでした」
おかあさんは気にしていない様子で明るく―
「いいのよ むかしはああいう人いっぱいいたんだから 今のひとはみんな大人しすぎるから」
と返すが、それでもT男くんはこれまたスイッチがはいってしまったマシーンのように、謝罪を繰り返す。T男くんが小指が痛いというので指を見ると、おかしな方向に歪んでいた。T男くんは「大丈夫」というが、ややエビぞっているし、小さいものの傷口が開いて、ピンク色の肉がのぞいている。TXくんが簡易用湿布をもってきて、貼った。しばらくお喋りをして盛り上がっていると、リビングのTVの脇にかけてあった飾りが落ちて、その下の鉢植えの台座になっていた陶器の台座が鈍い音をたてて、二つに割れた。

 おかあさんが今日は「ものの壊れる日」だといった。
 たしかに、とうなずいて、日本酒をぐびりと呑んだ。
 日本酒には「赤○」が書いてあった。
 そんなものか―と思った。 

◆そんな新年だった。
←menu